居宅介護支援(ケアマネジメント)の現場から

目次

〜進む人員不足と高まるプロフェッショナルの価値〜

高齢者を支える「ケアマネジメント」の役割とは

日本は2025年には約730万人が要介護・要支援認定を受けると見込まれ、2035年には高齢化率が33%に達するという未曽有の超高齢社会に突入します。こうした中、高齢者が住み慣れた地域や自宅で最後まで安心して暮らすための「キーパーソン」となるのが、居宅介護支援(ケアマネジメント)事業の要、ケアマネジャー(介護支援専門員)です。
ケアマネジャーは、ご本人やご家族の希望・生活背景を丁寧にヒアリングし、適切なケアプランを策定します。さらに、多様な介護サービス事業者や医療機関、行政との連携調整や、定期的なモニタリングとプラン修正を一手に担います。初めて介護保険を利用する際や、環境・心身状況の変化時には「何をどうしたらよいのか?」という不安や疑問が膨らみますが、ケアマネジャーはその道標であり、家族も支える存在です。

利用者増加の一方で進む事業所と人材の減少

2024年現在、介護保険サービス利用者は469万人超、介護サービス提供件数も右肩上がりです。特に自宅介護志向の強まりや独居高齢者、老老介護の増加もあり、居宅介護支援の需要は今後も拡大が必至です。しかし、その一方で大きな課題となっているのがサービス提供側の人員不足です。

居宅介護支援事業所の現状

  • 厚生労働省の統計によると、居宅介護支援事業所の数は2018年をピークに6年連続減少。2024年4月時点で全国36,459件と、この1年で738件(約2%)減少しました
  • 減少の主因はケアマネジャーの高齢化・退職や後継者不足。主任ケアマネジャーの確保が特に難しく、人材の確保には8割近くの事業所が「困難」と回答しています
  • 代替措置として「事業所の中・大規模化」や1人当たりの担当件数増加が進み、現場の業務負担は深刻化。2024年度報酬改定で担当上限は39件→44件へ引き上げとなり、「担当過多」が現場で現実化しています

ケアマネジャー人員は本当に足りているのか?

数字で見る「人手不足」の現状

  • 居宅介護支援事業所1カ所あたりの**常勤ケアマネジャー数は平均2.8人、非常勤0.2人。決して「余裕のある体制」とは言えません
  • 日本介護支援専門員協会の2024年調査では「ケアマネ採用が困難」との回答が78.3%、特に主任ケアマネは68.1%が「とても困難」としています
  • 新規参入の減少や資格取得希望者の減退、働き盛り世代の処遇格差・他産業流出も背景にあります

担当業務の増大と負担感

  • 利用者増加に比べてケアマネジャー人員の伸びが追いつかず、1人あたりの担当件数増加・残業増加・ストレス増大など負担悪化が避けられません
  • 多職種連携の推進、新たなICTツールの活用等で業務効率化を図る動きがありますが、現場は「量」だけでなく「質」の確保にも苦しんでいるのが実情です

2024年以降の対策と展望

報酬改定と制度改革

  • 2024年度介護報酬改定では「管理者の兼務緩和」「テレワークやオンラインモニタリングの拡大」「1人当たり担当件数上限引き上げ」など、柔軟な働き方や人材確保を後押しする措置が採られています
  • さらに、地域包括支援センターへの主任以外のケアマネ配置要件緩和、賃金是正・処遇改善策の強化も議論されています

それでも残る課題

  • 「主任ケアマネ」不足は慢性化。一定の研修・経験を持つ「準ずる者」に役割を拡大する動きはあるものの、専門性をいかに担保するかが焦点です
  • 世代交代や多様な働き方の推進、ICT利活用だけでなく、ケアマネのメンタルケア・キャリアパス確立など、現場支援のきめ細かな施策が急務です

ケアマネジャーの確保が「持続可能な在宅介護」のカギ

高齢者が最後まで住み慣れた自宅で安心して暮らす社会の実現のためには、「居宅介護支援=ケアマネジメント」の質と量、両方の持続的な確保が不可欠です。
人員不足の現場では、一人あたりの業務過多・精神的負担が深刻化し、離職や新規人材の確保難へと連鎖しています。それでも多様化・高度化する高齢者のニーズに、専門性と人間力で応えるケアマネジャーの役割は今後さらに重みを増します。

2035年には高齢者人口がピークを迎える中、「人材をどう育て、支え、長く働き続けてもらうか」は全ての介護現場の共通命題です。現場の声を政策・制度設計に活かし、より魅力的で働きやすい環境整備を社会全体で進めていくことが急務だといえるでしょう。

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